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物語の主人公について




Twitterの方でこんな投票をやったのですが、今まで自分の書いた主人公について創作上の解説や、まとめて書いた事がなかったなーと思うので、ここに記載。
以下、作品のリンクも添えて紹介。
ネタバレ含みます。




■椋木悠斗
見上げた空におちていく

実は自分はみあそらを作るまで、オリジナル作品というのを書き上げた事がありませんでした。
なので、悠斗が実質的な初の自分が生み出したオリジナル主人公第一号で、みあそらがオリジナル作品第一作。
(途中まで書いたり、メモ書きのようにした事はありますが、書き上げるに至った事はなく、またゲームシナリオ一本文(文庫本7~10冊くらい)の長編も初。

そのため、キャラクターの造型という部分で非常に悩みました。
名前は憲yukiさんから一番最初に貰った企画からそのまま貰ってきたので困らなかったんですが(同じネーミングからは、羽二生真央もそうです)、どのような役割を持たせて、どのような能力を持たせるかは非常に迷いました。

そこで思いついたのが「ヒロインにとって必要な人間にしよう」という事。
ユキは身体能力はあるけれども、その身体能力の高さはともすれば自らを傷つけてしまうほどの物であり、記憶が無いために何もしらない。
そこで、ユキを親であり兄であり恋人の立場から見守るに相応しいだけの社交性と、若者らしい調子のよさ。ピンチの時に身も心もヒロインを守れるような芯の強さとその理由付け……というのが悠斗の根幹になっています。

コレだけ見ると完璧超人になってしまうのですが、そこはユキの人では到達できない身体能力、アルに知識や真相を教えてもらわなくてはならない、式澤には経験で負けている…と「悠斗より上の能力を持つ人間」を配置すると共に、協力者もそれぞれ足りない部分を持ち主人公と補えるようにした事で、歯車がかみ合った感じがありました。

この時の「突出した物があっても、足りない部分では他者に負けているので、能力を組み合わせて事件にあたる」という部分は、今の自分の作風の根幹になってる気がします。
これが顕著になってるのが次の進矢でしょうか。



■倉上進矢
コンチェルトノート

みあそらが発売して、新規ブランドのためか知名度が低く、次はもう少し広く知名度を得られる内容にしよう…という打ち合わせがコンチェルトノートの最初でした。やっぱ学園物だよな、と。

そんな訳で主人公とヒロインを学園の2年生にするのは決定。
……という所から色々と趣味に走りました。
悠斗とユキの関係を踏まえて、ヒロインと主人公は二人で一人。学園なのでもう少し顕著に。ヒロインは頭脳担当……では主人公は? と来て、能力設定にまず悩みました。

頭脳担当=貧弱 というのが良くあるパターンなので、その裏となると肉体派設定なのが多いですが、それではありきたりだし、そもそもよほど運動神経が悪くない限り、頭が回る人って基本的に運動も出来るんですよね。
そこをあえて苦手にしても、自分の苦手な事を把握出来ないキャラが本当に頭がいいのか? となると、やはり違う感じもして……。
なので、莉都の方は弱点が無いのが弱点という風になりました。
弱点のない人間は他者からどう扱われるのか? という視点が作中にふんだんに入っています。

では対になる進矢は? と来て、答えはあっさり出ました。
「そんなヒロインが信頼できる人間にしよう」と。
進矢が持つのは「手先が器用」という一芸だけ。ただしその能力は天性の物で、更に進矢自身が自分自身に降りかかるトラブルを回避するために磨き上げた物。
莉都は全てにおいて100点取れる万能さだけれど、150点取れる進矢にはかなわない。そして「理不尽な不運」という、日常的な予測を遥かに超える出来事には協力して対処するしかない。
このような流れで進矢と莉都は生まれ、コンチェルトノートが出来上がりました。

そんな訳で、進矢はヒロイン主導で生まれた主人公の側面があります。
発売からずいぶん経ったコンチェルトノートですが、今でも他のメーカーさんから「コンチェルトノートのようなシナリオを」と言われる事もあり、長らく愛される作品になったのは嬉しいです。
同時に進矢は「不幸に対する現実的な対処」を突き詰めた結果、リアリストの部分を強く強調したために、プレイヤーによっては苦手と言われるキャラでもあります。



■皆神孝介
黄昏のシンセミア

こちらは当時の御奈神村報でも書いた通り、今まで生身で強い主人公が続いたので今度は違う方面に…という流れで、大学生かつ頭脳労働、肉体的なスキル無しとなりました。

発表した当初、実は結構反響がありました。
「あっぷりけの主人公って、自分自身が体を張るのが良かったのに、そこを変えてしまうのか?」と。今でも当時の御奈神村報を見るとユーザーからの投稿が載っています。
今では発売から大分経ったので孝介がどういう人物か分かって貰えてると思いますが、かなり意外に感じられたようです。
実は作り手としては、その意外さこそが狙いでもありました。
ゲームメーカーは大体三作ると、その三作目が代表作として扱われる事が多いです。自分の代表作が今でも黄昏のシンセミアとして扱われてるのを見ると、あながち間違って無いと思いますし。
そのため「三本同じような造型にしたら、その流れ以外ユーザーに求められなくなってしまう」という危惧を持ってました。それもあり、新作の主人公は悠斗、進矢とは違う路線にしようというのは決定事項だった訳です。


そんな訳で生身の能力を持たない主人公として生まれた孝介ですが、自分が孝介に求めた役割は「御奈神村の謎をユーザーに分かりやすく伝える」というものです。
孝介は大学で民俗学を学んでいる事もあり、謎や歴史について聞かされると、自分自身の持つ知識に照らし合わせて再解釈をする…というのが思考(ユーザーが読む地の文)のベースになっています。
そのため黄昏のシンセミア全体の地の文は、他の自分の作品と比べても少し変わってると感じられると思います。

ここを書くのは楽しかったのですが一歩間違うと「この主人公が言ってる事、意味が分からない」となってしまうので(たとえば怪物の話が出た時に、民俗学的には自然をそう解釈するという話題など)そういう感想を見た事が無いのは成功だったのだろうと思っています。

そして物語的な役割でも、孝介の「力が無いこと」は重要でした。
この世界にもたらされた天女の羽衣は設定の段階から万能のアイテムでした。物語のお約束というか法則として『作中に登場した不思議な力は、扱える扱えないにしろ主人公が一度は手にするべき』という物があります。
主人公に関わり無い所で超常的な力がやり取りされてると、主人公が蚊帳の外になってしまうという舞台装置の話でもありますし、プレイヤーが感情移入するはずの主人公が蔑ろにされてるようになってしまうのですよね。
なので、天女の羽衣という万能な力の反対の存在として、孝介という心は強いけれど肉体的には取り得のない人物が必要でした。

天から来た物は天へと帰る。

これが黄昏のシンセミアの根幹にあるのですが、得られる物が大きければ大きいほど、それを手放すための肉体とは違う強さが必要になります。
孝介にはその強さを持ってもらえれば、肉体の強さなんて要らなかった訳です。



■遠上涼士
紅蓮華

紅蓮華の開発は大変でした…。
とにもかくにも、ちょうど震災にぶつかってしまったのが痛すぎでした。
その後、実家の方の手伝いにいったり、巻き込まれた同級生の葬儀があったり福島の親戚が家を無くしたりとあって仕事にならない時期が大分長く続きました。
紅蓮華でも異界がどこまでも広がっていく山津波のシーンがあったんですが、そこを丸ごとカットして大幅に書き直したり……。

…と、当時の状況はさておき、紅蓮華はエスクードで自分が書いた第一作目という事もあり、色々と打ち合わせしながらも手探りでした。
学園物で、主人公は一芸を持っていて……とコンチェルトノートっぽいものからスタートだったのですが、打ち合わせの最中にやりたいこと、書きたいものなどを出し合って紅蓮華のベースが生まれました。

コンセプトとしては翻弄されながらも解決能力を持った主人公です。
くおんは猫をベースにした妖怪にするのは最初期に決まりました。猫の可愛さは人間を翻弄する所にもあるので、涼士はある程度翻弄されるだけの余地を残しておけば、後は勝手にくおんが場を引っ掻き回してくれる訳です。

くおんは猫なので、街中でも服は着ないし、好奇心が最優先だし、気まぐれだし……で必然的に涼士は苦労するハメになります。
が、あえてそこをくおんをいさめつつも翻弄される時間が後から見ると楽しいと思えるような関係にしようと思いました。
他のゲームに比べて自宅での宴会シーンが多いのも特徴ですね。

対になるキャラとしてはエウスリーゼとアリーセのコンビがあります。
作中で二対のコンビを出す事はコレまでになく、バトルモノで主人公側がペアなら敵もペアの方が引き立つという意味でもありますし、純粋に可愛い女の子を増やせる利点もありました。

何より、アリーセを緩衝材とすることで強く敵対したエウスリーゼをヒロインに持っていく流れにも出来る(敵対してたリーゼと恋仲になる事でくおんともイベントになる)と、色々と面白い組み合わせになったと思います。




■新堂道隆
花の野に咲くうたかたの

自分は活動休止してた積もりなんて一切ないのに、はなのので「あっぷりけ再始動!」と大々的に雑誌に書かれて驚いたタイトルでもあります。

「世界の記憶を色としてみてしまう」というのは、中高生くらいの時に「オーラを見る練習」とかしたことある人なら、すんなりとイメージしやすいと思います。
そんな所からきて「道隆が見えてしまう色とは何か」という部分まで掘り下げた事で、道隆と言うキャラが生まれました。
いやおう無く見えてしまう色のある世界。
なんとなくやなし崩し的に一人暮らしするエロゲ主人公が多い中で、自発的に孤独であることを求める動機付け。
「色が見えない」事で幽霊である桜花を主人公自身が証明できる……と、他のゲームではヒロインに合わせて設定された部分が多かった主人公像が、主人公主導で出来上がった感じもあります。

道隆の作品の役割は、桜花という安楽椅子探偵と世界を繋ぐ事です。

幽霊らしからぬ桜花。しかし幽霊は主人公自身が良く分かっている……この部分が実は重要で、鵜呑みにせずに理性的な話をする時点で「何故主人公は幽霊の存在を受け入れたのか」という部分がクリアできてないと、いくら推理を積み重ねても「いやお前、目の前の幽霊にも疑問に思えよ。証拠ないだろ」となってしまう訳ですが、道隆がひと目見れば証明できるというのは、物語の立ち上がりにおいて非常に話が早くすみました。
(もちろん、それその物が後半での「すんなり理解できる証拠があった事で、逆に見落としが生まれた」に繋がる訳ですが)

道隆は桜花と漫才しながら、事件とも呼べない日常の事件に関わっていったり、解決したりしなかったりします。
コンチェルトノートでの事件は結構洒落にならない事も多かったので、はなののでは出来るだけ軽くして、危ないものは選択肢でも回避できる別ルートを作ろうと決めてました。

道隆は桜花ともセットですが、汐音、麗奈を繋ぐ存在でもあります。
道隆を基点にして、桜花をあわせた4人での行動が基本になり、さらに世界が広がる……というのが、はなののの根幹で作ったベースの部分でした。

そのためある程度の社交性があり、他人を出来るだけ色眼鏡で見ない事。しかし、トラブルを避けたいという気持ちが強くあるために、いらない誤解も招きやすい事。
桜花が超然としていて、汐音は素直で小動物的。麗奈は唯我独尊とそれぞれ個を確立しているがために、見える色に振り回され、あるいは色があるがためにその奥の人を惑わされずに見てと、普通の男の子の側面も持っています。

これまでの主人公は人より優れた能力だったり、境遇であったりしましたが、「色」が見えてしまう事以外は出来るだけ普通にしようと心がけたのが道隆でもあります。




大分長くなりましたが、意外と主人公について書く機会って無いのですよね。
販促などでヒロインの可愛さや能力、境遇について語る場面は多いのですが……。

主人公は自己投影できるように無個性にすべきか、あるいは作品に合わせて個性をつけるか。
自分は後者の方が読んでて好きなので、後者で書くようにしています。

主人公も一人の登場人物として好きになってもらえたら嬉しいですね。
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